漆器は取り扱いが難しいという印象をお持ちではありませんか?
実際、漆器を長く、美しいままで使い続けるにはコツがあります。
私がこれまで実際に使ってみたり、古い漆器を見てきた中で気をつけたい点をお伝えしたいと思います。
高温は大敵
汁椀の変色
意外にお感じになるかもしれませんが
漆は高温が苦手です。
漆器というと汁椀のイメージが強いかもしれません。
しかし、熱あつの汁を度々注いでいると、汁が当たっている部分が変色します。特に黒いお椀だとそれが目立って「羊羹色」と言われる白濁した茶色になります。


漆自体の研究が進み、高温に当たっても変色しにくいように改良されてきていますが、まだまだ完全に克服できていないと思います。
汁椀と言う用途なだけに、この変色を避けることは難しいのですが、せめてグラグラ煮えた汁を入れずに一息落ち着いたところで注いでください。それでも何年か経つと変色が目立つようになります。
そう考えると、漆のお椀でお吸い物をいただくのは贅沢な事かもしれません。
蒔絵のお椀
料亭などで使われている、内側にも蒔絵の施された豪華なお椀は溜息が出るほどの美しさです。
料亭の方は大切に扱われていると思いますが、お椀という用途から内側の変色・劣化は避けられない事です。
メンテナンスで長持ちさせる事はできますが、いざ塗り替えとなると蒔絵は諦めるしかありません。(あるいは新たに描くかです)
無地の塗り碗
私は普段に無地の碗を使っています。
艶が無くなってきたら拭き漆でメンテナンスをして、気が向けば塗り替えます。
その時手元にある色漆で塗るので、何年かに一度、椀の色が黒くなったり赤くなったりします。
写真の赤い碗は元は木目の見える黒呂から黒になり、しばらくして赤に塗ったあと少し研いで根来塗り風になりました。
緑色の碗は元の色は忘れました。白漆が余ったので刷毛目をつけて塗ってから緑の色漆を塗り重ねて、下の白漆を研ぎだしました。


椀がはじける
そうやって致命的に傷む前に手入れしていても、熱い湯を注いだばかりに椀が「はじけた」事があります。


フリーズドライの味噌汁を作ろうとして、沸騰した湯を直接注いだ途端にパシッと音を立てて亀裂が入りました。
びっくりしました。大反省です。
以来、熱いものは一息おいてから注ぐようにしています。
このお椀は下地に布張り補強がされていないので急激な温度変化に木地と塗面が耐えられなかったのかもしれません。
こんな事があると、テレビCMで椀に直接熱い湯が注がれるのを見る度にはらはらしてしまいます。
その他の取り扱い注意
漬け置きをしない
小さなキズやひびがあるとそこから水が入って大きな剥がれの原因になります。
水が木地に浸みこんで木が膨張したり、乾いて収縮したりを繰り返すと表面の漆塗装が剥がれてしまいます。
洗ったら水滴はすぐ拭いておくと安心です。
直火にあてない
高温で変色、そして焦げます。
紫外線をさける
漆塗りの物全般に言えることですが、紫外線は塗面の劣化を促進します。
紫外線にあたっている部分だけ変色することもありますので、保管は暗い所が理想です。
表面にキズをつけないようにする
硬いたわしやスポンジでゴシゴシ洗ったり、フォークなど先の尖ったものを当てると表面に小さな傷が増えて艶がなくなります。
また、塗面が薄くなって弱くなります。
少しでも剥がれたりひびが入ったらすぐ手入れをする
落としたり、衝撃を与えた時はよく観察をして亀裂や欠けがないか確認しましょう。
洗った時、表面に付いた水滴がスルスルと亀裂に吸い込まれるのが見えて、割れに気付いたことがあります。
キズを見つけたら、出来るだけ早く手当て(修理)をしましょう。
そのまま使うと表面の塗りが浮き上がって剥がれてしまいます。そしてどんどん広がります。
小さなキズなら「拭き漆」といって、生漆を布や綿につけて刷り込む作業を繰り返すと目立たなくなります。
割れたり剥がれたりしたら、先ずは購入したお店に相談してください。作った人がわかっていれば修理もお願いできると思います。
私の工房でもメンテナンス(拭き漆)を承っております。(お椀の作業工賃目安¥5,000~)
拭き漆をすると見違えるほど艶がでます。
漆器は美しさと実用性を兼ね備えた、優れた器と言えます。
日々のちょっとした気遣いで長く使って育てていく楽しさを知っていただけたら嬉しいです。