漆工芸に関わるようになって、研磨材の奥深さを実感しています。
研磨材は字の通り削る事で形を整える研ぎ材と、磨く・艶を出すと言った磨き材に分類できると思います。
研ぎ材
研ぎ材のひとつ「砥石」
主に人工砥石を使っています。均一で天然砥石のようなムラが無く、安定して手に入ります。
包丁を研ぐときよく使われているのを見ます。父もいくつか持っていて、台所の包丁を研いでくれました。
砥石は刃物を研ぐのはもちろん、下地のさびを平滑にするのにも使います。先ずはざっくり青砥で研ぎ、赤砥で表面を整えます。
広い面積を研ぐときは大きいままですが、小品を研ぐときは小さく分割します。
平面を研ぐために、砥石自体を平らにする「面直し」用にはダイヤモンド砥石の使います。
天然の砥石もありますが、質が均一でないため思わぬキズが付くことがあるので塗面にはほとんど使いません。
時々、縁日に砥石屋さんが出ているのをみつけてのぞいてみまずが、驚くほど高価なものがあります。
カケラのようなサイズの物にも値段がついているのを見かけます。
※さび・漆に砥石の粉などを混ぜた充填材
重宝してます「クリスタル砥石」
三河産業の「クリスタル砥石」という人工砥石で、漆工用として販売されています。
400番~3000番まで7段階の粗さがあって、下地作業から塗面の仕上げまで使えます。
元の大きさは1.8×2.8×5㎝ほどですが、細かい部分を研ぐ用には使い易い大きさに切ります。
写真の一番右はクリスタル砥石を切るときに使う「金切鋸」です。
繊細な研ぎには「研ぎ炭」
これはもちろん、木を焼いて作る炭ですが漆工芸用の物は決まった材料や製法があるようです。
備長炭のような重さはなく、軽い炭です。小さく切り分けるにはやはり金切鋸を使います。
駿河炭・朴炭・椿炭などの種類があり漆工材料店で手に入ります。天然の材なので、使える部分を選り分ける目と、使い易く整える手間が必要です。
人工砥石で代用できなくは無いのですが、漆の塗面をピッタピタに平にしたい時や、蒔絵の細かい部分を研ぎたい時はやはり炭が必要です。
それに、炭で研いでいる時の研ぎ心地が何とも気持ちいいのです!
近年、この研ぎ炭を作る人が減った為か、なかなか高価に品です。しかも消しゴムのように容赦なくちびていくのでコスト面で悩ましい材料です。
磨き材
「角粉」に代わるもの
磨き材も自然物・人工化合物があります。
昔は鹿の角を焼いて粉砕した粉を磨き材としていたそうです。
今でも「角粉(つのこ)」と呼ばれる物があるようですが、材料が本当に角がどうかわかりません。
工房では磨き材として下記の3つのタイプを主に使っています。
- クルマの塗装磨きにも使うようなチューブ入りで練歯磨き状のクリームタイプ
- ボトル入りの乳液タイプ
- 呂色粉と呼ばれる漆工芸用のパウダー
どれも粒子の細かさが数段階あり、工程によって使い分けています。
もちろん、仕上げに近づくほど細かい粒子の物を使います。
粒子の細かさと粒子の硬さのバランスを考えて研磨剤を選ぶのが結構難しいです。